ヴィクトリア(2015)

(C)MONKEYBOY GMBH 2015
眩い光がフラッシュする地下のクラブで、ひとりの若い女性が激しいダンスに身を委ねていた。3ヵ月前に母国スペインのマドリードを後にして、単身ベルリンでの生活を始めたヴィクトリアである。踊り疲れて帰路につこうとしたヴィクトリアは、夜明け前の路上で地元の若者4人組に声をかけられる。スキンヘッドのボクサー、ひげ面のブリンカー、童顔のフース、そしておしゃべり好きなリーダー格のゾンネは、一見するとチンピラ風だが悪人ではないようだ。ヴィクトリアがドイツ語をしゃべれないため、ぎこちなく英語で会話を交わして意気投合した彼女たちは、コンビニでビールを調達してビルの屋上へ。そこでの他愛なくも愉快なひとときは、異国の都会で孤独を感じていたヴィクトリアにとって、久しぶりの温もりに満ちた時間だった。 やがてヴィクトリアはアルバイト先のカフェで仮眠をとるため、ゾンネに店まで送ってもらうことにする。ゾンネにせがまれ、店内に置かれたピアノでリストの「メフィスト・ワルツ」を弾き始めるヴィクトリア。ゾンネはその見事な演奏に感嘆するが、つらい記憶が脳裏をよぎったヴィクトリアは浮かない顔だ。16年以上も毎日厳しいレッスンに明け暮れたのに、壁にぶち当たってピアニストになる夢を捨てたことを告白するヴィクトリアを、優しく励ますゾンネ。いつしかふたりの間には親密な感情が流れ出していた。 カフェにやってきた仲間たちと合流したゾンネは、ヴィクトリアと再会を約束して車で立ち去る。しかし彼らは、まもなくカフェへ戻ってきた。何か重大なトラブルが発生したらしく、ゾンネとボクサーは気が高ぶり、フースは足取りがおぼつかなくなっている。ゾンネの説明によれば、ボクサーが刑務所に入っていたときに世話になった人物に借りを返すため、これからある“仕事”をしなくてはならないという。酔いつぶれたフースの代わりの運転手役を頼まれたヴィクトリアは「仕事が終わったら、ここに送り届ける」というゾンネの言葉を信用し、その依頼を受け入れるのだが、行く手にはヴィクトリアらの人生を一変させる悪夢のような事態が待ち受けていた……。

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