フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白
今年のアカデミー賞で最優秀長編ドキュメンタリー賞を得た衝撃的な作品。ケネディ、ジョンソン両大統領時代、キューバ危機やベトナム戦争といった大事件を取り仕切った主役ともいえる元国防長官へのインタビューが、生々しいニュース映像とともに綴られていく。それは、自負であり、反省であり、悔恨であり、そして時には自慢でもある。
戦争の世紀と言われる20世紀を、様々な立場で経験していった人間の語る戦争とは、そしてアメリカとは。太平洋戦争末期、日本への原爆使用の是非論も交え、アメリカは戦争をどう考え、どう捉えていたのか。そこには強いアメリカを意識した不遜な驕りと、戦争を押し進めていった当事者としての懺悔のような思いが、複雑に交錯している。
昨年の「ボウリング・フォー・コロンバイン」や、今年話題の「華氏911」など、ここのところドキュメンタリーには傑作が多い。今作も、今年88歳になるというマクナマラ氏の、なお矍鑠とした語り口とともに、世界とは、戦争とは、そして平和とはをじっくりと考えさせてくれる秀作である。そして長年主要ポストにあって、無数の人々と接してきた、彼の哲学、11項目の教訓がさらに興味深い。その最後の項目<人間の本質は変えられない>の示唆するところは?人間は元来好戦的なのか、それとも平和を望んでいるのか。今という時代だからこそ語られねばならなかった告白。必見の作品。
- 公開日
- 2004年9月11日(土)
- 監督
- エロール・モリス
- 音楽
- フィリップ・グラス
- 出演
- (ドキュメンタリー)
- 製作年
- 2003
- 製作国
- 米
- 原題
- THE FOG OF WAR
- 上映時間
- 107
- 配給会社
- ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント