パピヨンの贈りもの

8歳の少女、エルザは25才の母親と暮らしている。母親は仕事に友達付き合いにと自分自身の生活に忙しい。放課後に大好きなママと二人きりで映画を観に行き、夕食にはハンバーガーを食べるという、ささやかな願いも叶わない。エルザと同じアパートに住む老人ジュリアンは、腕のいい時計職人だった。今は現役を引退して、趣味の蝶の蒐集に熱中する気ままな一人暮らしを送っている。ジュリアンはエルザを見かねて自分の部屋へと招き入れた。ジュリアンにも、ささやかだけれど切実なたった一つの願いがあった。それはヨーロッパで最も美しいと言われる幻の蝶“イザベル”を手に入れること。ある日、フランス南部のヴェルコールの山にイザベルが現れると聞いたジュリアンは、管理人のマルグリットに猫の世話を頼むと、さっそく車で出発した。期待に胸を膨らせたジュリアンは、まもなくとんでもない同行者がいることに気づく。なんとエルザがこっそりと車に隠れていたのだ。エルザの母親は友達の家に出かけていて、夜も遅いというのに連絡が取れない。翌朝、ジュリアンはエルザを警察に連れて行こうとするが、田舎の自然に触れたことのないエルザの、山や鳥、牛や蝶を見てみたかったと言う一言にほだされる。こうして、少し不思議な組み合わせの二人の旅が姶まった。