9000マイルの約束

第二次大戦後、ドイツ人中尉のクレメンス･フォレルは戦争犯罪者として有罪判決を受け、他の3000人の捕虜とともにシベリアに送還された。しかし、移送される途中で、すでに捕虜の3分の1は寒さや飢え、疲労のために命を落としていった。生き残った者は北東に向けて行進させられ、収容所に辿り着いたのは1,236人だった。そこは、ランプの光さえ乏しく、死刑宣告にも等し所。収容所からの逃亡は不可能に思えた。1947年、クレメンス･フォレルは、愛する家族の待つドイツへ帰ろうと脱走を試みた。計画は失敗に終わったが、家族へ会いたいという確固たる意志がくじけることはなく、フォレルは再び危険な脱走劇を計画。それを知ったドイツ人医師シュタウファーは、元々自分のために準備していた精緻な脱走計画をフォレルに託した。シュタウファーは癌に侵されており、もはや自ら計画を実行することができないのだった。1949年10月、フォレルは凍てつく寒さの中、脱走計画を決行する。力の限り広大な氷原を走り抜け、北シベリアの広大な無人地帯に逃げ込む。野生動物からの脅威や、孤独、寒さと飢えによる死の危険に常にさらされながらも、彼は一歩一歩、着実に前進していったのだった。1951年の夏、彼はモンゴル国境まで到達した。1952年夏、貨物列車を乗り継ぎながら、フォレルはコーカサスに辿り着いた。収容所を脱走してから、既に3年が過ぎようとしていた。1952年10月、フォレルはペルシャのタブリーズに到着するが、カメリアフ中尉の策略によって、フォレルはソ連のスパイ容疑で再び逮捕されてしまう。