太平洋戦争中の1944年8月、オーストラリア東部の田舎町カウラにあった第十二捕虜収容所で近代戦史上最大1104人に及ぶ集団捕虜脱走事件が起こった。正確に言えばそれは脱走ではなく「死ぬため」だっ
た。“このまま生きて祖国には帰れない――”
当時の日本軍人、そして民間人の精神をも支配していた「戦陣訓」に象徴される「捕虜を恥」とする教義がその背景にはあったとされる。一方で収容所で手厚い保護を受けた生活をおくる捕虜たちの間には、生きることへの執着が確実に芽生えていった。“生きたい、生きて帰りたい”事件の生存者は当時の正直な心情を吐露する。だが、捕虜たちの生きることへの願いは「貴様らそれでも帝国軍人か!」のひと言でかき消されてしまった。
同じ状況に置かれたとき、私たちは大きな声に、まわりの圧力にあらがうことができるだろうか?生存者たちに今なお残る悔恨、その思いを受け止めようとする若者や演劇人、事件を教訓に和解への道を歩んできたカウラの人々―。 “カウラ事件”の深層がコロナの時代を生きる私たちに問いかけるものとは何なのか。知られざる戦争の歴史をひも解くドキュメンタリー。
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カウラは忘れない
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2021年8月7日(土)公開